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第1回:海外駐在の給与事情 – 手取り1.8倍の裏側

収入全体像:基準給与と手当のバランス

早速実際の収入の違いを具体例(独身のケース)を用いて表します。ほぼ実際の水準です。

日本アメリカ
(毎月)
毎月の額面:50万円
所得税:1.5万円
住民税:2.5万円
厚生年金・健康保険:7.0万円





手取り額:約39万円
(毎月)
毎月の額面:50万円
(みなし)所得税:1.5万円
(みなし)住民税:2.5万円
(みなし)厚生年金・健康保険:7.0万円

駐在手当:10万円
物価調整:20万円(みなし控除後額面×物価調整率)
現地ポジション手当:10万円

手取り額:約79万円
(ボーナス)
ボーナス:額面125万円(1回)
所得税:15万円
厚生年金・健康保険:18万円

手取り:92万円(1回分)
(ボーナス)
ボーナス:額面125万円(1回)
所得税:15万円
厚生年金・健康保険:18万円

手取り:92万円(1回分)
年収:850万円
手取り:652万円
年収:1,500万円から1,600万円の水準(逆算)
手取り:1,132万円

さらに、住居費は会社が負担してくれるため、日本にいるときに負担していた家賃の支払いがなくなります。これで、更に100万円程度はプラスの効果が発生することになります。

(解説)

駐在員の給与体系は、日本国内勤務とは大きく異なります。駐在員になると一般的に 額面で1.6倍、手取りで1.7~1.9倍 に増えると言われます。この増加分は純粋な昇給ではなく、海外での生活を送るうえで必要な各種手当が上乗せされているためです。海外赴任手当だけで月10~20万円程度支給される企業も多く、これに家賃や交通費の会社負担を加えると、家計から出ていくお金が減るため貯蓄や投資にまわせる余力が生まれます。

この手当という部分がミソで、手当については非課税ですのでそのまま手取りが増えることになります。

代表的な手当とその相場

海外赴任手当 – 駐在員に最も広く支給される手当で、異文化や言語の壁に挑む精神的な負担を補償する目的があります。相場は月10万~20万円。この手当は生活を潤すだけでなく、「駐在員」という役割へのインセンティブの意味合いもあります。

物価調整手当 – 国によって物価が大きく異なるため、実質購買力を維持するための補償です。物価の高い国ほど金額が大きく、アメリカやスイスの大都市では月40万円以上になることもあります。

例えば2025年5月時点のロサンゼルスでは、1ベッドルームの家賃が月額3,000〜4,000ドル、外食はランチで1人20ドルから40ドルと日本より高いため、こうした手当が家計のバランスを保つ役割を果たします。更に、これらの金額に州税(州によっては非課税)の支払い必要であり、更にチップが18%~25%程度上乗せされます。

つまり、ランチ20ドル+州税+チップで、総額で25ドルから50ドルの支払い必要になります。日本円で考えると、凡そ3,500円から7,000円のイメージです。

ハードシップ(危険地)手当 – 治安やインフラが不十分な地域で勤務する場合に支給される手当です。相場は年間50万~150万円。アメリカでは大都市の治安が比較的良いため支給されないことが多いですが、中南米や治安の不安定な地域に赴任する場合は大きな収入源になります。

役職手当・現地ポジション手当 – 日本では一般職でも現地法人では管理職になるケースがあり、その責任や部下のマネジメントを評価するために支給されます。課長クラスで月10~12万円、部長クラスで月15万円程度が上乗せされることになります。

帯同家族手当 – 配偶者や子どもを連れて赴任する駐在員には、家族の生活費や教育費を補填する目的で支給されます。目安は約10万円/月。共働きだった家庭では配偶者が仕事を辞める場合も多く、その減収を補う意味合いもあります。

単身赴任手当 – 家族を日本に残して単身で赴任する場合は、生活拠点が二つになり費用が増えるため、10万円前後の手当が支給されます。日本にいる家族の元への帰省費用や通信費も含まれることが多いです。

子女教育手当 – 駐在員の子どもが現地校やインターナショナルスクールに通う際、学費を補助する手当です。学費は日本人学校で年間50万~100万円、インターナショナルスクールでは400万円近くかかるケースもあり、企業が学費の一部または全額を負担します。詳細は教育回で解説しますが、家計へのインパクトが大きい手当です。

語学手当や研修費補助 – 一部の企業では駐在員やその家族が語学学校に通う費用を補助します。現地の言語を学ぶことは業務効率だけでなく日常生活の質を高めるためにも重要で、積極的に活用したい制度です。

給料決定方式:購買力補償方式・別建て方式・併用方式

海外赴任者の給与は「購買力補償方式」「別建て方式」「併用方式」のいずれかで決められます。

  • 購買力補償方式 — 外部コンサルタントが作成する生活水準データを基に、現地通貨で必要な生活費を計算し、日本の給与に見合う購買力が保てるよう調整します。大手企業で広く採用され、物価の高い都市でも安定した生活水準を維持できるメリットがあります。
  • 別建て方式 — 日本の給与とは無関係に、現地の給与制度を適用して金額を決定する方式です。現地採用社員との公平性が高い一方、日本での年収と大きく異なる場合があり、税務リスクが指摘されています。
  • 併用方式 — 日本で受け取っていた手取り金額を円建てで支払い、現地で発生する余分な費用を手当で補填する方式です。為替変動の影響を受けやすいものの、中小企業では導入が進んでいます。

企業により給与決定方式が異なるため、赴任前に自分がどの方式に当てはまるのかを確認し、為替リスクや税金の負担をシミュレーションすることが大切です。

税金と為替リスク:グロスアップと税金肩代わり

日本とアメリカでは税制が大きく違うため、駐在員の給与は「ネット・オブ・タックス(税引後金額保証)」で設計されることが多いです。アメリカでは家賃や車の提供、保険料など会社が負担する福利厚生も個人の所得とみなされ課税対象となるため、企業は支給額を増やして税負担を調整する「グロスアップ」が必要です。

例えばカリフォルニア州では、単身駐在員に対して月額約8,258ドルの総経費がかかり、そのうち約3,012ドルが手取り給与という例が他のブログで紹介されています。会社は差額の約5,246ドルを住宅や税金の支払いに充てることで、駐在員本人の手取りを一定にしています。家族帯同のケースでは総経費が約17,576ドル、手取りが約6,024ドルであり、家族分の税金や保険料、教育費を含めた多額の調整が行われていることがわかります。

為替リスクも無視できません。給与の一部は円建てで日本の口座に、残りは米ドルで現地の口座に支払われることが多いですが、円安が進むと円建て部分の価値が下がり、円高が進むと米ドル建て部分の価値が減ります。物価調整手当や為替調整手当があるとはいえ、駐在期間中は為替レートをチェックし、余剰資金の運用や外貨預金をうまく活用したいところです。

豊かさと節約のバランス

収入が増えるからといって、現地での生活が常に贅沢というわけではありません。物価の高い都市では、家賃や外食費、教育費が日本よりも高額であり、手当をすべて使い切ってしまうと貯蓄が増えないどころか赤字になる可能性もあります。外食を控えて自炊を増やしたり、現地のスーパーのセールを利用するなど、日常的な節約習慣が重要です。駐在は「資産を増やすボーナスタイム」とも言われますが、浪費を防ぎ、余剰資金を投資や教育費に回す意識が求められます。

(続きはこちら)第2回:充実した福利厚生 – 住宅・医療・語学・ライフライン

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