駐在員がまず恩恵を感じるのは住宅に関する福利厚生です。
多くの企業は家賃の 90~100% を負担し、治安の良い高級エリアに住むことができます。単身赴任でも2LDKやプール付きの高層マンションを選べることが多く、家族帯同なら一戸建てやタウンハウスに住める場合もあります。
地域によって住宅費の水準は大きく異なります。例えばロサンゼルスのダウンタウンでは1ベッドルームの家賃が月3,000~4,000ドル、郊外でも月2,000~2,500ドルとされ、サービスアパートメントやエグゼクティブスイートに住む場合は月4,000~7,000ドルかかります。ニューヨークやサンフランシスコはさらに高い賃料ですが、会社負担で住めるため、駐在員は住居費を気にせず生活できます。
ただし、高級物件に住むことが必ずしも最良とは限りません。家族帯同の場合は郊外の一軒家のほうが広くて子育てに適しているケースもあります。住宅を選ぶ際は、治安・通勤時間・子どもの学区・日本人コミュニティの有無を総合的に考慮しましょう。
アメリカの医療費は世界でも突出して高く、加入する医療保険によって負担額が大きく変わります。家族4人の民間医療保険料は月1,500〜2,000ドル(約20~30万円)になることもあり、一般家庭であれば家計を圧迫します。駐在員の場合、企業が高額な医療保険に加入させ、保険料を全額負担するのが一般的です。さらに、駐在員専用の24時間日本語医療相談窓口や緊急時の医療搬送サービスが付帯する場合もあり、心身の健康をサポートする体制が整っています。
一方、日本の健康保険を利用して医療費を請求する場合は注意が必要です。海外で治療を受ける場合、治療費を全額自己負担してから日本の健康保険組合に請求する仕組みで、戻ってくる額は日本国内での治療費相当分に限られます。例えば盲腸の手術がアメリカで約300万円かかった場合、帰国後の申請で約42万円しか戻らなかったという事例が報告されています。民間の国際医療保険に加入するか、会社の加入プランを確認した上で補償内容を把握しておくことが不可欠です。
ハード面の福利厚生に目が行きがちですが、ソフト面のサポートも駐在生活の満足度を左右します。多くの企業は海外赴任前に 語学研修や異文化トレーニング を提供し、赴任後も駐在員と家族が現地の語学学校に通う費用を補助しています。現地の言語を習得することで、日常生活だけでなく仕事の効率も向上するため、積極的に利用したい制度です。
駐在生活は慣れない環境や長時間労働によるストレスが大きいため、企業は メンタルヘルス支援 やカウンセリングサービスも提供しています。アメリカでは専門の心理カウンセラーを利用する費用が高額になるため、このような支援は重要です。配偶者や子どもの相談にも応じてもらえることが多く、家族全体の精神的安定に寄与します。
生活費の細かな部分でも企業の補助が受けられます。例えば通信費やインターネット料金の全額または一部を補助する企業があり、現地でのスマホやWi‑Fi契約にかかる負担を軽減してくれます。また、海外では自宅の光熱費や清掃費が高額になることがあり、駐在員が契約するメイドやハウスキーパーの費用を会社が負担するケースも報告されています。特に東南アジアや中南米では、ハウスキーパーを雇う費用が安いため利用しやすく、育児や家事の負担を大幅に軽減してくれます。
福利厚生の内容は国や企業によって様々ですが、自分に必要な支援がどこまで含まれているかを把握し、追加で必要な保険やサービスは自費で加入するよう準備しましょう。