特別編:年齢別モデルケースと具体的な収入事例

海外駐在の待遇は、企業や役職はもちろん、年齢や家族構成によっても大きく異なります。ここでは具体的な数字を公開している事例や調査結果を基に、30代・40代・50代のモデルケースを紹介し、赴任前と後でどれだけ収入や生活費が変わるのかを具体的に示します。また、民間企業だけでなく、国家公務員(外務公務員)の在外手当水準も参考として掲載します。

年代別収入目安

一般的な年収の目安としては、海外駐在になると国内勤務時の年収が約1.5倍に増えると言われます。年代別の年収レンジは下表の通りです。

年代国内年収目安(万円)海外駐在年収目安(万円)
30代700~1,0001,000~1,300
40代900~1,3001,300~1,800
50代1,200~1,8001,500~2,500

上表はあくまで目安ですが、企業や駐在先によってはさらに大きくなる場合もあります。特に総合商社や外資金融など高給企業では、30代で年収3,000万円超に達する例もあります。

具体例1:メーカー企画職30代(南米駐在)

ブログ情報ですが、南米駐在の30代男性(企画職)が給与明細を公開しています。彼の国内勤務時の手取りは約38.4万円/月だったのに対し、駐在後は家賃や教育費、車両費を会社が負担するため 手取りが約84万円/月 に増えました。内訳は以下のようになっています。

  • 国内給与(日本円):基本給 約82万円/月。
  • 現地給与(現地通貨換算):約16万円/月。
  • 住居費:家賃28万円/月を会社が全額負担し、光熱費は月数千円のみ。
  • 子どもの教育費:日本人学校の授業料5万円/月を会社が負担。
  • 車・ガソリン:社用車とガソリンカードを支給。自家用車は不要。
  • 語学学習補助:現地語学学校の費用14万円/月を会社が補助。

これらの手当が合計すると、国内勤務では出費となっていた住宅費や教育費がゼロになり、手取りが 2倍以上 に増えています。この例は30代の管理職クラスですが、駐在の魅力を示す代表的なケースと言えるでしょう。

具体例2:総合商社30代(米国駐在)

総合商社大手・三井物産では、国内の平均年収が約1,784万円と高水準ですが、海外駐在になると年収は 2,676万~3,568万円 と推定されています。同社の駐在員は現地法人の責任者として働くケースが多く、住宅手当や子どもの教育手当に加えて、現地の税金や保険料を会社が肩代わりするため、手取りベースでは国内の1.5~2倍になるとされています。

具体例3:アフリカ派遣35歳課長

海外赴任情報サイトでは、アフリカに派遣された35歳課長の事例を紹介しています。この課長は駐在中の 手取りが約1,100万円/年 に達していますが、同水準の手取りを日本で得るには約2,000万円の年収が必要になると説明しています。手当の内訳としては、海外勤務手当(月5~10万円)、ハードシップ手当(月3~30万円)、物価調整(給与の±30~50%)などが含まれます。南米や中東など治安やインフラに不安のある地域では、ハードシップ手当が大きく、年齢に関係なく収入が大幅に増えるケースが多いようです。

具体例4:台湾駐在者(外資コンサル・30代後半)

台湾で外資系コンサル企業に駐在している30代後半の日本人は、赴任前の基本給が約110万~130万円/月であるのに対し、赴任後は会社が現地の税金を全額負担し、さまざまな手当が支給されることが紹介されています。具体的には、住居手当72,000台湾ドル/年(約288万円)一時帰国費用4万円/年赴任準備金5万円家族手当6万円/年医療費補助5万円健康診断費2万円 などが支給され、実質的な手取りは国内の数倍になっているとのことです。台湾や中国などアジア地域では生活費が比較的安い一方、手当が充実しているため、貯蓄に回せる余力が大きい点が魅力です。

具体例5:若手駐在員28歳(英国⇒米国)

大手メーカーで働く28歳男性は英国駐在時にお小遣い(自由に使えるお金)が 7.5万円/月から37万円/月 に増えたと報告しています。会社が家賃・医療費・車両費を全額負担することで、月10万円以上の固定費が削減され、年間のお小遣いは約670万円になったと述べています。これは日本で年収1,200万円のサラリーマンと同程度の自由裁量を持つ計算であり、20代後半でも駐在員になれば部長クラスの生活水準を享受できることを示しています。

具体例6:インド駐在者40~50代(コンサル会社の試算)

インドで日系企業の進出支援を行うコンサルタントによると、インドに駐在員を派遣する企業のコストは年間 1,500万~2,000万円 程度で、日本本社での年収が600万~800万円クラスの40~50代既婚者が対象になることが多いといいます。駐在員は家賃や車、家族帯同費用など多くの福利厚生が付くため、会社の負担は国内給与の約2~3倍に膨らみます。この水準は駐在先や役職に応じて変動しますが、インドのような新興国では企業側のコストが高い一方、現地採用者の年収は300万~400万円/年と差が大きく、駐在員の待遇が際立っていることがわかります。

国家公務員(外務公務員)の在外手当水準

民間企業だけでなく、国家公務員が海外公館に勤務する場合も在外手当が支給されます。外務省が公開する在勤基本手当の表によると、2025年度の米国駐在者への月額手当は以下のとおりです。

役職区分在勤基本手当(月額)
大使・特命全権大使131万円
公使・参事官クラス98万円
特殊技能を要する職員91万3,500円
一等書記官(6号)73万800円
二等書記官(7号)61万5,900円
三等書記官(8号)51万400円
事務官・技能職員(9号)36万5,400円

上記の手当は日本の俸給(本俸)に上乗せされるもので、これに加えて 住居手当配偶者手当、子女教育手当 などが支給されます。住居手当については自己負担が家賃の2割程度で済む制度となっており、高額な海外住宅に住むことができます。このように国家公務員の在外手当は民間企業と同等かそれ以上の水準であり、公務員が海外駐在を目指す際の大きな魅力となっています。

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